6・虚実篇

勝つためにとるべき態勢、形勢
 

  • 戦争に際して、先に戦場にいて敵の来るのを待つ軍隊は楽ですが、後から戦場に着いて戦闘を行なう軍隊は苦しい戦いを強いられます。
    戦いに巧みな人は、相手を思いのままにしますが、相手の思いどおりにされることはありません。

     
  • 遠い道程を行軍して疲れないというのは、敵のいない土地を行軍するからです。
    攻撃して必ず奪取するのは、敵の守備できない所を攻めるからです。
    守っては堅固だというのは、敵の攻撃できない所を守るからです。
    敵はどこを守ればよいのかわからず、どこを攻めたらよいのかわかりません。
    これを無形、無音といいます。

  • 軍の形の極致は無形になることです。
    無形であればスパイも嗅ぎ付けることができず、敵がいかに知謀に優れていても攻略法を考えつくことができません。
    無形であれば一般の人は皆、味方のとった態勢が勝利をもたらしたことは理解できても、それがどのように運用されて勝利へ至ったのかまでは到底理解することはできません。

  • まんが 孫子の兵法まんが 孫子の兵法
    尤 先端

    集英社 1998-08
    売り上げランキング : 290669

    Amazonで詳しく見る
    by G-Tools

 孫子曰く、およそまず戦地に処(お)りて敵を待つ者は佚(いつ)し、後れて戦地に処りて戦いに趨(おもむ)く者は労す。
故によく戦う者は、人を致して人に致されず。
よく敵人をして自ら至らしむる者は、これを利すれぱなり。
よく敵人をして至るを得ざらしむる者は、これを害すればなり。
故に敵、佚すれぱよくこれを労せしめ、飽けぱよくこれを饑(う)えしめ、安けれぱよくこれを動かす。
その必ず趨(おもむ)く所に出でて、その意(おも)わざる所に趨く。
行くこと千里にして労せざる者は、無人の地を行けばなり。
攻めて必ず取る者は、その守らざる所を攻むれぱなり。
守りて必ず固き者は、その攻めざる所を守れぱなり。
故に善く攻むる者には、敵、その守る所を知らず。
善く守る者には、敵、その攻むる所を知らず。
微かなるかな微なるかな、無形に至る。
神なるかな神なるかな、無声に至る。
故によく敵の司命(しめい)たり。
進みて禦(ふせ)ぐべからざるものは、その虚を衝けぱなり。
退きて追うべからざるものは、速かにして及ぶべからざれぱなり。
故にわれ戦わんと欲すれぱ、敵、塁(るい)を高くし溝(こう)を深くすといえども、われと戦わざるを得ぎるものは、その必ず救う所を攻むれぱなり。
われ戦いを欲せざれば、地に画きてこれを守るも、敵、われと戦うことを得ざるものは、その之(ゆ)く所に乖(そむ)けぱなり。

故に人を形せしめてわれに形なけれぱ、われは専にして敵は分かる。
われは専にして一たり敵は分かれて十たらぱ、これ十をもってその一を攻むるなり。
すなわちわれは衆にして敵は寡(か)なり。
よく衆をもって寡を撃てば、わがともに戦うところの者は約なり。
わがともに戦うところの地は知るべからず。
知るべからざれぱ、敵の備うるところの者多し。
敵の備うるところの者多ければ、わがともに戦うところの者は寡(すく)なし。
故に前に備うれぱ後寡なく、後に備うれば前寡なく、左に億うれば右寡なく、右に備うれぱ左寡なく、備えざるところなけれぱ寡(すく)なからざるところなし。
寡とは人に備うるものなり。
衆とは人をして己れに備えしむるものなり。
故に戦いの地を知り戦いの日を知れば、千里にして会戦すべし。
戦いの地を知らず戦いの日を知らざれぱ、左は右を救うこと能わず、右は左を救うこと能わず、前は後を救うこと能わず、後は前を救うこと能わず。
而るを況(いわ)んや遠き者は数十里、近き者は数里なるをや。
われをもってこれを度(はか)るに、越人(えつひと)の兵は多しといえども、またなんぞ勝敗に益(えき)せんや。
故に曰く、勝は為(な)すべきなり。
敵は衆(おお)しといえども、闘(たたか)うことなからしむべし。

故にこれを策して得失の計を知り、これを作(な)して動静の理を知り、これを形して死生の地を知り、これを角して有余不足の処を知る。
故に兵を形するの極は、無形に至る。
無形なれぱ、深間(しんかん)も窺(うかが)うこと能わず、智者も謀ること能わず。
形に因りて勝を衆に錯(お)くも、衆は知ること能わず。
人みなわが勝つゆえんの形を知るも、わが勝を制するゆえんの形を知ることなし。
故にその戦い勝つや復(ふた)ぴせずして、形に無窮に応ず。

それ兵の形は水に象(かたど)る。
水の形は高きを避けて下(ひく)きに趨(おもむ)く。
兵の形は実を避けて虚を撃つ。
水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝を制す。
故に兵に常勢なく、水に常形なし。
よく散に因りて変化して勝を取る者、これを神(しん)と謂う。
故に五行に常勝なく、四時に常位なく、日に短長あり、月に死生あり。

 

 

.

 

top

1・始計篇

2・作戦篇

3・謀攻篇

4・軍形篇

5・兵勢篇

6・虚実篇

7・軍争篇

8・九変篇

9・行軍篇

10・地形篇

11・九地篇

12・火攻篇

13・用間篇

 

 

 

 

inserted by FC2 system